sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

締め切り

 このあいだ「締め切り」という言葉に遭遇して以来ずっと考えていて、締め切りに追われるというのはあまり気持ちのいいことではないけど、小説を書いてみるとあれは動き出したものを文字にしようというのをマトモにやっていたら終わりというのは来なくてたぶんずっとやり続けることになってしまう。締め切りがあればとりあえずいったんそこで動きを止めることができるから、それ以降も続いていく動きはそれはそれであるんだけど締め切りを設定していったん止まるきっかけをくれる人の存在はとてもありがたいのだと思う。

 わたしは職業作家ではないから締め切りを設定してくれる人は今のところいない。『ジドウケシゴム』のときは、このままでは本当に動きが止められない、となったところでその小説を冊子にすることとその冊子の朗読即売会の予定を決めてしまった。しかも家の近所ではなくて横浜の友達の店で。 この友達はレコードと家具とサンドイッチなどを自分の店で売っているのだけど、前々からももこさんが何かやりたいときはいつでもやってもらっていいですよと言ってくれている親切かつ変わった人だ。だから今から何日あれば冊子が刷りあがるかとかを調べるよりも前にその友達に連絡をして予定を決めてしまった。ただ友達の店で会を開くというだけだと束縛度が低いので、日程を首都で開催される山下澄人さんの朗読会の前日に設定することにして行かざるを得なくした。

 こうして1月下旬に首都圏へ出向くと決めてから印刷所を色々当たってみたけど、年末年始を挟むので間に合うかどうかはかなりギリギリだってことがわかった。でもまあ間に合わなかったら間に合わなかったでなんとかなるだろうということでとにかくどんどんやること(入稿とか飛行機の予約とか)をやった。日程に余裕は全くなかったから書く動きはほぼ強制的に止まったし、冊子も朗読即売会に余裕で間に合ったし、それでなんの問題もなかった。

 いま書いている本は虹霓社の古屋さんと一緒につくっているから珍しく自分で決めなくてもうっすらと締め切りのようなものが見えるような見えないような感じではあるけど古屋さんもプロの編集者でもなんでもないからわりと「いつでもいいですよ〜」と手綱さばきは甘くて、すでに依頼を受けてから3年近く経とうとしている。この間の古屋さんの仕事の9割は「待ち」だった。9月くらいにはようやく1冊目の本ができるんじゃないか。