sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

2023-01-01から1年間の記事一覧

語りを聞くこと

この3か月くらい一向に書く動きが起こらなかったのはやっぱり何かおおごとみたいになりかけていた、気負いと呼ばれるようなものがあらわれかけていた、肝心なのは語りを聞くこと、それもそのまままるごとで、生活の動きの中で聞く、あれもこれもみな書いては…

聖クロース

わたしが子供のころ、毎年12月25日の朝には枕元に包装紙につつまれた本が置いてあった。本じゃない年もあったかもしれないけど本だった。何の本だったかはいまはわからない。あれが欲しいとか誰にも言ったことはなかったはずだけどそれは毎年届いた。わたし…

讃美歌114番

この投稿をInstagramで見る 自然卵のヨベル(@jubileetamago)がシェアした投稿 いまなおみつかい つばさをのべ つかれしこのよを おおいまもり かなしむみやこに なやむひなに なぐさめあたうる うたをうたうおめでとうなんて言ってられないひともいる。「き…

人間喜劇

わたしは人からすすめられたりもらったりした本が読めないことが多くて、無理やり理由っぽいことを書けばそうやってわたしの手元にやって来た本と呼吸がなかなか合わないみたいな、だからわたしの本のサンプルを送られてもすぐに読む気にならない人の気分も…

「夢野久作 わたしの、いなか、の、じけん賞」の記録

9月10日、土民生活流動体の本が校了して印刷所への入稿も済んでしまったところでポカッと生じた空白にポコッと吸い込まれるようにしてあらわれたのが「夢野久作 わたしの、いなか、の、じけん賞」の案内文だった。応募の規定には「原稿用紙4枚以内」と書かれ…

欠航

今日は島の外へ出かけていた。帰りの船に乗ろうとチケット売り場へ行ったら「強風のため欠航」の貼り紙があって、小型船は海が荒れたら止まるかもしれませんとは朝の時点で言われていたから驚きはなかったけどそこから最終便のフェリーを2時間待つあいだ少し…

「近いというよりあれは完全無欠のデモテープです」

これがいいことか悪いことかそのどちらでもないのかはわからないけどわたしはこどものときから「これをこのようにするためにこれをこうしてこっちをこうするぞ」という風に何かをやることができない。じゃあどうやるのかといえばとにかくバーン!とやってし…

「たまたま」は、首都トーキョーで暮らす頑張り屋さんも離れ小島の引きこもりもいっさい区別しない

狭義の生活必需品以外の「もの」が「売れる」のはたぶん、それをつくった人間とはまったく別の人間がいやあこれ本当におもしろいなあ/おいしいなあ/助かるなあ、とか、何かよくわかんないけどこれが売れる世の中だったら痛快だなあ、とか、なんでもいいん…

《これ》

15年近く前に出版社からの頼まれ仕事でつくった本の写真がついさっき思いがけず流れてきて、あの頃はわたしの《生きている》の場にいたけど今はもうここにはいない生き物、あの頃はいなかったけど今はいる生き物、あのとき「わたし」とされていた粒子の淀み…

自分の「わかる」の範囲外にあるもの

自分の「わかる」の範囲外にあるものをそのままにしておけなくて「非科学」という付箋を貼りつけて蛇蝎のごとく忌み嫌うのもオカルト用語の額縁にはめ込んで内輪で自慢し合うのも、どちらも遠かった。だから話すのに少し神経をつかった。今はそのままで話せ…

飽きるまで続く謎連載〈第4回〉

気配は消えていた。さっきはあったはずだけど建物のすき間の奥、動いていた、誰かが見ていた、僕のことを見ていたわけじゃない。何かが動くのを見ていた、誰かが、でももう、ない。僕はからだの向きを変えてまた坂をのぼる。眼鏡屋どこだっけ、もう一度僕は…

飽きるまで続く謎連載〈第3回〉

いっぷくすんべ、て言う前によ、さっき振り下ろして土ん刺さったまんまの鍬を杖みたいにしてよ、体重かけて腰ぐっと伸ばして、ふっ、いっぷくすんべ、とこうやるけどオレが毎日これやってんの知ってんのはまあオレだけだ誰も見てねえから。あっこのあれ、見…

その名乗りを信頼した人だけが行ける場所で

『ジドウケシゴム』は「わたし」が見た動きした動きが書き連ねられていく小説でその「わたし」が「わたしはザラマンゥ」としょっぱなで名乗りをあげている。その名乗りを信頼した人だけが行ける場所でイヤレ、ハビ、エイェという音であらわされる者たちが《…

誰かの御守りになったりもする

せがれが赤子のころ、いわゆる「ワンオペ育児」と呼ばれる状況にあったわたしは、チラシを書いて刷って近所の行きつけの食堂に置いてみたことがある。// 「赤ちゃんを放ったらかして一瞬でもいいから休みたい」という気分になったけど、頼める知り合いもいな…

読んでくれたひとたちに「書きたい!」という動きが生じているらしいことがとてもうれしい

『土民生活流動体書簡集(一)バックレ可(笑)』をうちまで買いに来てくれた友達から昨日の昼ごろひさびさにLINEがきた。買ってくれたのが10月の半ばで、それ以来会う機会もなかったし連絡も取り合っていなかったんだけどその間に彼女は本を読み終えていて…

書いてみると動き出す

昨日ここに書いたものを読んだ連れ合いが、買うだけ買って食べない人とか読まない人とかがいるのもまたおもしろいよね、と言った。書くとこうやって動き出す。書いてみてわかるのはそこに何か思い込みがあるってことで、それがいいとか悪いとかではなくとに…

みんなもおもしろい本が読めてよかったね

わたしは雇われることは苦手だけど働くのはそんなに嫌いじゃない。お客さんの応対をしてものを売るのも結構すきだ。いまはささやかな直売所をひらいて毎日たまごを売っているけど、まず誰よりもわたしがうちのメンドリの産むたまごがだいすきだから売ってい…

支払った額が本気度をあらわすという設定

わたしはわたしがいま払えない値段の本はつくらないし、わたしがいま払えない入場料の会は催さない。だから何だということではないけどそれはずっとそうしている。もちろん「払えない」わけじゃなくて、かき集めたり少し思い切ったりすれば払うことはできる…

飽きるまで続く謎連載〈第2回〉

駅前のロータリーからこの坂に入ったときにあの本のことがよぎった。あの本ってどの本かはわからないけど、今日もあるのかなあれ、緑色の、あの、ウインドウの隅っこの、眼鏡屋?そうだ眼鏡屋、どこだったっけ、僕はあごを突き出すようにしてすこし先のほう…

高木護『放浪の唄 ある人生記録』(移植)

富士宮の虹霓社から復刊された高木護『放浪の唄 ある人生記録』をお送りいただきました。早速読み、読んだ直後の《これ》をすぐ書きました。 16歳で南方(シンガポール)送りになり、感染症で死線をさまよい、終戦を迎えて捕虜になり無人島で抑留され、帰っ…

飽きるまで続く謎連載〈第1回〉

駅の北口の小さいロータリーの先からある程度まっすぐのびている商店街はほんの少しだけ坂、いかにも坂!っていう坂じゃないからあれを坂と呼んでる人にあったことは僕はまだないけど傾きがあることはこのからだがわかっている、のぼり坂、坂の入り口に果物…

11/11文学フリマ東京情報

『土民生活流動体書簡集(一)―バックレ可(笑)―』をリリースしてくれた虹霓社の古屋さんが11/11土曜日に東京湾岸?とかのなんか広い会場?で開催される「文学フリマ東京37」に出展するそうです。ブースは「G-38(第一展示場)」とのことです。このイベント…

テデトール

育苗中の山東菜を腹ペコ系あおむし連中が遠慮なく食べ尽くそうとするので毎日お水をあげるついでに殺虫剤ならぬ殺虫技テデトールをおみまいして37564しようとするのが毎年この時期の慣わしなんだけど葉っぱの色とそっくりなのでなかなか見つけられないし捕っ…

今日から第2集うごきなおす

今日から土民生活流動体書簡集(二)(仮) をし始めた。もともと1冊のつもりで編んでいたものが気がついたら430ページとかになっていてしかもその大半がまだまだそこからあさっての方向にホップしかねない気配がむんむんに漂っていたからとりあえずいけるもの…

おやすいごようでい

今日も友達に書いてくれてありがとう!と言われた。どういたしまして、おやすいごようでい、こちらこそありがとう

真綿のような正しさが誰かの首を絞めあげている

『土民生活流動体書簡集(一)バックレ可(笑)』を読んだ方からの感想を読むと、6通目の「設定が違う」に触れてくださってることが多いです。リリースからの1か月でそこまで感想が殺到しているわけではないから数で言うと数件ではあるのだけど、今回収録し…

『ジドウケシゴム』のやり方はどうだったか2

おととい『ジドウケシゴム』のはじまりがどんなふうだったかを思い出していて、まず最初に移動の日の仕事は天幕の解体からはじまると書いたからその書かれたものを引き受けざるを得なくなった、とブログに書いたけど、2019年2月19日に自作の原稿用紙の最初の…

『ジドウケシゴム』のやり方はどうだったか

今日の山下さんの質問コーナーで、山下さんがここのところnoteに書いている「わたしの小説のやり方」というのを読んだ方が、読んだときによぎった(のであろう)ことを質問していた。まずは読んでもらえるとこの後の話がしやすいのでよろしくお願いします。…

断片小説連続執筆療法の生まれかた

2019年2月7日、連れ合いが午前中の野良仕事で冷え切った身体を温めるべく昼から風呂に入ったはいいけどいつまで経っても出てこない。心配になってのぞいてみると浴槽に沈みそうな体勢で寝ていたので声をかけたら飛び起きた。人間がいちばん冴えているのは眠…

稲刈りがはじまっている

昨日から田んぼ協同組合の稲刈りがはじまっている。黙って手動かしてときどき一服しながらしゃべって、みたいなペースがちょうどいい塩梅のメンバーと毎年一緒にやってきているので、そうじゃないパターンが発生すると疲れが倍になる。こういうのにいちいち…