sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

なぜディストリビューターを通さないのか

ディストリビューター問屋卸売業者出版取次、とかいろんな呼び方があるけどとにかく製造人と小売人の間に立って品物をさばく業者、というのが存在する。

いろんな製造業者からいろんな品物を預かって一か所で取りまとめていっぺんに注文できるようにしてくれるディストリビューターがいることによってまず小売店は圧倒的に手間が省ける。特に小さいお店なんかは1つ1つの作品をそれぞれの製造業者から仕入れようにも一度にまとまった数はなかなか仕入れられないから、1つにつき数百円の取り分のためにいちいち支払いやら何やらの手間をかけていられない、というところがほとんどだと思う。振込手数料やら送料やらもいちいちかかる。ちっとも効率が良くない。そこに目をつけた人がディストリビューションの仕事を編み出した。みんな飛びついたんだろうね。で、いつしかそれは当たり前のことになった。製造業者からしても、在庫を預かって代わりに全国各地津々浦々に告知を流してくれて自分の知らない店からも注文を受けてくれたりして、全部代わりに梱包・発送してもらえるのはとてもラクだ。当然手数料は取られるけど、省けている手間を考えたら決して高くない。

ただし、ディストリビューターが扱っているのは品物それじたいではなく数字だから、一定期間が過ぎて売れ残った分は製造業者に返される。売れてますよ!追加でもっとください!と煽られてあわてて刷ったり焼いたりして納めたものが、忘れた頃になってしれっと返されたりする。赤い伝票といっしょに。

わたしは鶏を飼って彼女たちの産んだ卵を売るようになって、自分が数字だけのやり取りを望んでいないことがよくわかった。卵を広い範囲のたくさんの人に買いやすくすることはできるけど、それには数字だけのやり取りがついて回る。売れ残りです、といって返されたり破棄されたりする卵が生じるのにわたしは耐えられない。わたしにとってはつくったものはみな生鮮食料品だから、本もやっぱり卵と同じです。

手間かかってもいいよっていう人々とやり取りできたらそれでいいやと今は思っている。めんどくさいけど手間かけるのも楽しいよ。