sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

冊子のヨベルお仕事情報

冊子のヨベル校正室が校正を担当(索引は除く)した書籍『ある水脈と石川三四郎』が虹霓社からリリースされました。情報はこちらから。


「一日のうち三分の一は農作業、大工仕事をし、残りの時間はヘンリー・ソロー全日記を訳している」(あとがきより)という著者の山口晃さんは石川三四郎と同じ埼玉県の本庄の人、あるとき仏語英語が読めるからという理由で図書館の人から「石川宛の書簡を整理して欲しい」と頼まれて引き受けたが最後、うっかり石川に興味が湧いてしまってその数年後から石川三四郎関連の資料などを研究・紹介する個人誌をつくるようになった。この個人誌は10年にわたって発行し続けたそうだ。

そういう、なにかのきっかけで作用しあってしまった〈それ〉を無かったことにできなくて誰に頼まれるでもなく格闘しはじめてしまって気がついたらああでもないこうでもない、金になるかとか原稿用紙1枚いくらだとか、そんな「確約」なんか一切無いのに書いてしまう刷ってしまう配ってしまう、今回リリースされたこの本はたぶんそういう人にしか書けない、そういう人しか書かない本だとわたしはおもう。500ページ超えの分厚い本だけど、伝えたい「テーマ」だとかたどり着くべき「結論」だとかそういうものとはまったく別のところで山口さんは日々書いている。合間の時間に書いている。これからもこの本は確実に続いていく。こういうものは終わりようがない。なんで書くんですかぁ?なんて聞くのはまったくの野暮だ。「なんで」も「かんで」もあるかい。

長いこと誰も本にしようと言わなかったこの原稿を本にしたい、となったのが出版活動家の古屋淳二さん(虹霓社)だ。これまたそうなってしまったものはどうしようもない。なにしろ古屋さんはよしのももこに本を書いてくれと依頼するようなうっかり者なのだから後先の事を考えられるような人ではない。それでこの定価3600円+税の、寝転がりながら読むには重たい本がこの世にあらわれたわけだ。

この世はそうであって欲しい。まじでみんなどんどんうっかりやってください。

よしのももこ