よしのももこが書いたある程度まとまった長さのものはこれまでに2冊、本のかたちでリリースしています。『ジドウケシゴム』と『土民生活流動体書簡集』です。説明をケチるわけではないのですが、どちらも「ピンときた方は取扱店で入手してください」としか言いようがありません。なぜなら人間によって書かれたものはすべて、《それ》が書かれていることに気がついて喜ぶ人間が必ずいるからです。本の発売情報に気がつくということではなく、《これ》が書かれている!と気がつく人間が絶対にいる。それは1人かもしれないし100万人かもしれないけど例外はない。いっさいない
人間がなにかを書くとき、その書かれるものはその書き手「個人」の、「固有」の、「個別」のタンクからひねり出されるようなものではなく、どこかで誰かを通過したものがたまたまその書き手のところにあらわれたときに《それ》は起こる。起こってしまった以上、その書き手はそれまで《生きている》をやってきたすべて、何千年も何万年も継続してきたすべてを使ってそれを言葉で書こうとする
そうして書かれたものに《それ》が書かれている!と気づく人間は、書かれたものの一部だけであってもとにかく触れさえすれば必ずピンとくる。書き手に「才能」があるかとかはたぶん関係ない。「センス」だの「技術」だの、下手するとむしろ邪魔なこともあるかもしれない。だから本当はこの本には何が書かれていますとかどこがどうおもしろいんですよとか誰が推薦してますとかいう説明あれ全部いらなくて、別にあってもいいけれど、なくてもいい、んだけどそれ言っちゃうといろんな人の仕事がなくなって困っちゃうからまあ、わざわざ言わなくていい笑
ピンとくる、
としか言いようがないですよね、
『ジドウケシゴム』と『土民生活流動体書簡集』のことは冊子のヨベルのウェブサイトに置いてあります
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