sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

『わたしハ強ク・歌ウ』を読んだ3

ノートに紙にひとりで書く、誰に頼まれたわけでもないのに、そこに書かれなかったことは書いた人が「書かなかったこと」だったり「もともとなかったこと」だったりするけど、もともとなかったそれは別のノートでは「もともとなかったこと」なんかじゃなくて当たり前に書かれていたりする。書かれたものがいくつかあってはじめてそれがわかる。いくつかの書かれたものを見つけてそれらを編み合わせて書く人もいて、それは確かにすこし不純なことかもしれないけど「これ」は常にそういうふうにつくられているんだからそれはそのままの「これ」で、編み合わせて書く人の動きそのものを書こうとした人がいままでほとんどいなかったんじゃないか。

山下さんの新しい小説を読んでいく間、一つひとつの見たもの、したこと、聞こえる声がいちいちおもしろい、そこに《生きている》が立ちあがっていて、これこのままずっと終わってほしくないなあ、だけどのら、の帰還をずっと前から待ってたみたいにわたし(よしのももこ)のからだが、どのへんからなってたのかはわからないけど最後のページに来たときにはすでになってて、待ってたというかずっと気にしていた。そこに「ヨォ」って声がしたとき、わたしがそれをずっと気にしてたことがわかって、ぶぁーっとテープが巻き戻るみたいになって、止まった。あれはすごかった

どこを切り取って読んでもおもしろいのは本当におもしろい