sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

12時6分だった

いつも乗らない大きな船に乗って大きな街へ来た。高いビルの近くを通って本屋に向かった。ざーっと背表紙を眺めて回って、15分くらい見たかな、何も買わずに店を出てまたさっき来た道を戻ったら、高いビルの中から信じられないほどたくさんの人の群れが流れ出て来た。時計を見たら、12時6分だった。お昼の休憩なのだ。休みたくなくても、食べたくなくても、お昼の休憩は12時から1時間なのだ。わたしはそれができない。具合が悪いときに誰かの許可を得ないと休んだり帰ったりできない場には居られない。もう続けられないとなったときに誰かの許可を得ないとやめられない場には居られない。少し離れたところにある取ってつけたような広場まで歩いて、ベンチに座ってパンを食べようと袋に手をかけたら黒い衣装に身を包んだ人の影が後方から目の端に入ってきた。まず2人、すかさずもう2人、さらに3人、死角から湧き出るようにどんどん人があらわれて列になって歩いていく。みんな服が黒い。そして若い。人の湧出が終わった。最後尾の3人だけ黒くない、ポロシャツのようなものを着ていた。3人ともそんなに若くないように見えた。首から札のようなものをさげて、黒い若い人達を見張るように、追い立てるように、それか見守るように、ぽたぽたと歩きながら遠ざかっていった。