sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

誰かの御守りになったりもする

せがれが赤子のころ、いわゆる「ワンオペ育児」と呼ばれる状況にあったわたしは、チラシを書いて刷って近所の行きつけの食堂に置いてみたことがある。

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「赤ちゃんを放ったらかして一瞬でもいいから休みたい」という気分になったけど、頼める知り合いもいないし…という方はわたしが店内で抱っこしてます。無料じゃ気味が悪いでしょうから若干の対価をちょうだいします
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日本銀行券が欲しかったわけではないから100円だったか150円だったか?もう忘れたけど対価としてそのくらいの額を書いていたはずだ。その食堂に子連れで(大人は自分ひとりだけで)来た人がごはんを食べている間わたしが赤子さん抱っこしてますから自分のペースでのんびり食べてください、大泣きしてたら気にはなっちゃうとは思いますが。。みたいな主旨で、それはわたし自身、そういう誰かが居てくれたらなぁと思った瞬間があったからまずは自分がその誰かになってみよう、ということでそれを書いた。

やはりこのチラシは怪しかったらしく抱っこを依頼してくる人はひとりもいなかったんだけど、しばらく経ったある日、近所の雑木林の中の公園でせがれと2人でいたら赤子連れの女性がふらりとやってきて立ち話になった。われわれ2組以外には誰もいない夕方の公園。話しているうちに何かの拍子でチラシの話になって、その女性は「あのチラシ、冷蔵庫に貼って御守りにしてるんです」と言った。きっとわたしはまた“一般的ではない異様なこと”をやらかしてしまったんだろうな、ぐらいに思っていたわたしはとても驚いてしまって、えーすごい!ほんとですかあ、みたいなことしかたぶん言えてない。今ここから見ると、その女性の言葉はあのときのわたしのことも「一瞬たりとも息が抜けないというプレッシャー」から解放してくれたんだなというのがわかる。やっぱり書いてばらまいて、よかった。

目に見えるかたちの反響とはぜんぜん別のところにそれを本当に必要としている人がいたりする。つくられたものはつくられたもののやり方で動いて人と出会っていくのだからそれを信じてまかせていればいい。“子育て中の人のための御守り”をつくるぞ!と思ってつくったわけではないあの手書きチラシを御守りにしてくれた人がいたように、いまわたしの目の前にあるこれらの本もこれからあちこち散らばっていくのだろう。