sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

定住民と移動する民

定住民と移動する民の《生きている》の動きが交差する場所、まったく広くはない広場のような、とわたしはいつかのどこかの地点でゆかりがあった(ある)らしくて、ときどきそのことがここをよぎる。去年の1月に自分で本にした小説『ジドウケシゴム』を書いたときもそうなった。

定住民と呼ばれる人々と移動する民と呼ばれる人々は毎日それぞれのしかたで生活をしている。そこに移動の日があらわれない/あらわれるの違いはあるけれど、このスラッシュ(/)は「対比」じゃない。すっぱり2つに割り切れるものでもなくそれぞれそこにある。定住民と移動する民はそれぞれのしかたでそのとき立っている(座っていたり寝転がっていることもある)土地と関わり合いを持っている。土地はあらゆる生き物の《生きている》や無機物の《ある》の集まりでありその集まりの持続であり、その関わり合いがそのままそこに居合わせたものたちの《生きている》の模様になっている。

あの本の中で「定住民」「移動する民」とそれぞれを呼ぶのは定住民と呼ばれる人々だけで、移動する民と呼ばれる人々はどちらのこともそういうふうに呼ぶことがない。しかしそれらは敵対しない。あの本の中で定住民と移動する民は食べるものを持ち寄り分け合う。食事をともにする。言ってみればただそれだけの小説。あの本を売りはじめてもうすぐ1年になる。これまでに150冊ほどが動いた。読まれたかどうかはわたしにはわからない。150冊「しか」と言うことも150冊「も」と言うこともできるけど150冊動いたは「150冊動いた」で、その動きの1つひとつに人の手が関わっている。

「あの本」これです→http://sasshinoyoberu.tamakkosan.com/jidoukeshigomu.html