sasshinoyoberu’s blog

よしのももこ&冊子のヨベル

全幅の信頼、化けの皮、脱皮

せがれが、骨のまわりに肉をつけて皮で包まれたものとしてここに生まれ出てきたばかりの頃、わたしはその「せがれ」とわたしが呼ぶ生き物から全幅の信頼を寄せられていることにびっくりしていた。わたしが何をしたからとか、わたしがどんな人間だからとか一切関係なくただただ丸ごと信じて頼られている、そのことを少しプレッシャーに感じるときもあった。イヤイヤイヤイヤあっしなんざァ頼っていただけるほどの者じゃございやせん、めっそうもない、みたいな

それから何年も経った。せがれが少しずつ育っていくことは、その無条件の信頼が少しずつかたちを変えていくことでもあった。あれ?この人も別に完璧とかではないのかも?あ、やっぱり。ありゃーけっこう頼んないな、大丈夫かな?…信頼が失われるというよりは、別に超人でもなんでもない一人の人間がだんだんあらわれてくる。わたしの化けの皮が剥がれてくる

自分の意思(なんてものがあるとして、の話だけど)では決してかぶることはなかったであろうその皮をわたしにかぶらせたのはせがれだ。せがれの全幅の信頼がその皮をわたしにかぶらせた。かぶらせてくれた、かぶらされた、かぶらざるを得なくなった、化けの皮をかぶってる自覚なんかないままここまできた、気がついたらどうやらかぶっていたらしい、みたいなことでしかない

この十何年かのわたしはそれによってかたちづくられていたし、わたしは今そのことをうれしく思っている

そろそろ脱皮だ