だいぶ前に偶然出会った人づてに小説の冊子と手紙を届けてもらったことがある。届け先は店を営んでいる人。これもなにかの縁かな、と、よぎったのでそうした。現物に触れてピンときたら仕入れてくださいピンとこなければそのままほっといてください、その時点で書けることはみな手紙に書いた。しばらくして届けてくれた人から連絡があって、届けたら喜んでいたけれどいま忙しいみたいなのでまた頃合いを見てあの件どうですか？って連絡してみてください、親切で言ってくれているのはわかったからありがたくてうれしかった、けどわたしはそれはしなかったしこれからもたぶんしないだろう。遭遇した機会を逸する自由が誰にもある。忙しいとかなんか気が向かないとか面倒くさいとかただなんとなくとか、そのときよぎったそれがそのときのすべてだからそれでいいとわたしは今のところは思っている。また50年後とかに遭遇するかもしれないし。とかなんとか書いたけど、忙しいのに、明日までにやらなきゃいけないことがこんなにあるのに、うっかり遭遇した本をうっかりひらいてうっかり読み切ってしまうみたいなことは起こる。うっかりした人が読んでくれたらうれしいし、やり取りができたらうれしい
